みんな大好き「感度のいいウキ」 その2 イナバウキ

あまりにも良くできたウキなので放っておけません。「イナバウキ」

昔々の1995年ごろわたしもこれに良く似たウキを作ったことがあったので、その憧れはなおさらです。

NASA
「南米チリの沖合いの島に発生したカルマン渦列(NASAのホームページより)とイナバウキ」だそうです。「イナバウキ」の作者さんは挿絵のセンスも抜群ですね。


この方=たぶん「イナバさん」といわれる方のページというか、論文というか、ネタというかには、あまりにも貴重な「ウキに関する考察」が含まれていて、「自分で高性能なウキを作って楽しみたい」種類の人間は絶対に一読する価値があると思います。いや、一読と言わず熟読する価値も十二分にあると思います。 そしてその結果として最後に必ずでてくる疑問

「なぜイナバウキは誰も使わないのか?」

いや、もっとありていに言ってしまえばこれはもう「誰も見向きもしない」ほどの無視ぶりです。そんなにこのウキの作者さんはトモダチが少ないのでしょうか?

あ、いやつい興奮して物事を自分の体験と混同してしまいました。失礼しますた。ということでまあその理由を論理的に積み上げて行っていても仕方ないってか、ここはそういう趣旨のブログでもないし、私もやっぱり同じくらいにトモダチ少ない人間なので(おいおい・・)、ここでもあっさりその結論から言ってしまうと

「釣れないから」


ということになろうかと思います。そして「釣れない」ことは釣用のウキにとってはほんの少しだけ致命的な欠点でもあるわけで、そこにはもしかして「理論と現実にあまりにも大きな乖離が生じている」のかもしれないという、また新たな疑問が生じてくるわけであります。そこで私のずいぶんと捻くれた性格からしてこの問題を「イナバウキの悲劇」とか命名して、思わず知らず茶化して行くのが何時ものパターンなのですが、今回は自分の残りの人生ももうあまりないので、もう少しまじめにかつ作者さんに敬意を表して実体験・「実戦から逆にたどる論法」で、このウキがひょっとしてひょっとしたら「理論倒れ」となっているのではないかを考えてみたいと思います。

「イナバウキは釣れない」理由=「あまりにも使いにくい」ので誰も使わない。ということになろうかと想像します。他の人がこのウキを作ってみて実戦しているのを見ているわけでもないので、ここはあくまで想像ですが・・・

「あまりにも使いにくいのはどういうことなのか?」なのですが

1.沈み過ぎる。とてもよく沈む。あまりにも沈む。波がきたら沈んでしまう。サカナが引かないでも沈んでしまう。サシエサの重さが少し変っただけでも沈む。理由もよくわからんが沈んでしまう。あまりに沈み過ぎてそもそもなにをやっているのかわからなくなってしまうw

2.沈みやすいのは感度がいいからなのだろとガマンもするが、アタリでないのに波で沈んだ場合に今度はいつまでも浮いてこない。まあイライラしていればそのうちには浮いてくるのだが、これはお得意の「渦抵抗の少ない形状」が沈むのと逆方向に引っ張られるためこのウキの「浮かない能力」を最大限に発揮してしまうため。

3.サカナの引き込みアタリとは関係なく、気持ちよく仕掛けを投入してチャポンと水に入ったらそれだけで「こいつもしかして人生をはかなんでいるんじゃないか?」と思うくらいに浮いてこない。一投ごとに入水自殺の幇助をしているような気がして気が滅入ってしまったりしなかったりする。

4.沈み過ぎるネタが続きますが・・・オモリの調整があまりにもデリケート。ウキのトップ部だけが水面上に出て、本体(棒よりふくらんだ部分)は水面下にあるようにオモリを調整しなければならないが、あまりにもデリケートなために鉛の調整にすごく時間をとられる。「こんなん現場でやっちゃおられんで。オモリの調整で一日終わるで。わたしの青春を返して!」と感じられるほどに面倒。無論誰かに見られたらちょっとだけ恥ずかしいので決してそう叫んだりはしません。

5.沈み過ぎる。まだまだいきます。せっかく苦労してオモリを調整したのに、潮が動いて仕掛けを下からひっぱられる力がほんの少し強くなったらまたしても沈む。サカナが引かなくても沈む。やたらと沈む。腹が立つほどに沈む。いや、もう十分に腹は立っているかも・・・。

6.沈まない。あれほど沈みに沈みまくって、やたらと沈んでいたウキなのだがエサ盗りにエサを盗られるときには沈まない。とくに潮の流れが緩んで池のような状態になって「さあ!」という感じになったときに、サカナがエサを咥えたときに沈まない。「カワハギ・チヌ・グレ」に対しては悲しいほどに沈まない。無力。それでもしまいにウキが少し浮くのでサシエが盗られたのがわかるのはこれは朗報? ちなみに潮が動かない「池のような状態」のときのハゲ・チヌ・グレはホバリングして水中に静止してエサを齧ります。ハゲは有名ですが、チヌやグレも驚くほどにエサ盗り上手です。たまにエサ盗りのヘタなヤツがウキを少し押さえたりするので、そのときにえいやっと合わせたら案外大きなサカナが針に掛かったりして驚いたりします。こんなときにはウキに対する不信感が極大値をとることとなります。

まあ、もうすでに「使いにくい」値もかなり致命的な領域に達しているかとは思いますが・・・加えて

7.長い。持ち運びに不便。細い棒状の部分が多いので折れないようにガードするそれなりに丈夫なケースが必要。ケースに入れると今度は真ん中あたりの膨らんだ部分が案外カサ張って邪魔になり、ケースにはあまりたくさん収容できない。浮力適合が難しいウキなのでそれなりの大きさのウギをそれなりの数揃えて持参する必要があるのにそれがものすごい荷物になる。このウキを一式装備していくのを躊躇せずにできる人はあまりたくさんいないのではないか?まあ一式装備する人もあまりおらんだろうけど・・・・

8.対応力が弱い。ここまでの「浮力調整がデリケート」で想像できると思いますが、たとえば「ちょっと水中ウキを加えたい」とか「流れに合わせてハリスにジンタンを1つ追加したい」とかの対応はほとんど現実性というものを持たないほどの難作業となります。いわばウイリアムテルのリンゴ撃ちみたいなもんです。違うか?違うな・・・まあ、誰にとっても「やってみようとも思わないほどの困難」ってことですね。また後でもこの問題はでてきます。

9.弱い。もろい。これほど大切に現場に持参したウキながら、耐久力はあまりないと思われます。「んなことねーだろ?軸はカーボンだし」と思うかもしれませんが、例えば実戦で一番大きな衝撃を受けやすいのは案外「防波堤」や「岸壁」です。それも巨大な魚が引いた衝撃なんかではありません。エサを取替えようと仕掛けを巻き上げてそれを波止のうえに降ろす瞬間です。持ち上げられたウキが逆さに向いて頭からコンクリートの上に真っ直ぐに「コトン」と落されます。一見小さなショックのように見えますが、ウキにとって見れば踏み潰されることの次に大きな衝撃です。まあたまに振り回して叩きつけるようなこともなきにしもあらずですが。で、この一見何気ない「ヤマグチモモエの歌の文句」のようなささやかな衝撃ですが、ウキの構造からみれば結構おおきな慣性モーメントが想定外の部分にかかってきます。何度か繰り返すとあっさり壊れるくらいのショックになります。まあ、この衝撃について考慮してあるウキというのは実は市販品にはあまりたくさんは見あたりません。ただ、全くないとかほとんど無いとかというほどでもないのは、それが考慮してあるウキというのはおおむね相当に実戦を経て改良されてきたウキが多いということです。。あるいは逆にあまりないという理由は商業的に「さっさと壊れて新しいのに買い換えてもらう」という意図が含まれているものかもしれません。

10.見難い、てか見えない。単にトップが細いためです。色の問題やらで別にページを設けておられますが、そんな難しい問題ではないです。単純にトップが細すぎます。湖沼での釣りならともかくヘタすると潮に乗せて100m以上も流していく海の釣りではほとんどものの役に立たないくらいトップがか細い。しかも不幸なことに完全に同じ物の色違いでないかぎり、その場に応じてウキを取り替えるということは先の負荷調整問題のために不可能。未明~日没までの時間帯で最も見やすいトップの色も変化していくのだが、「ちょっと黄色に」とか「ちょっと緑に」なんてこともできない。先の「対応力問題」がここでも出てきます。ちなみにこの作者さんは別にウキの見やすい色について考察されておられます。「もしかして日本感光色素研究所にお勤めですか?ハヤシバラさんのご親戚ですか?」と聞きたくなるくらいの色見本も提示されておられます。すごいです。

11.風に弱い トップが長いので風に吹かれると傾きます。傾くと同時に2つの特徴がでてきます。それは「感度が良くなる」のと「感度が悪くなる」の2つです。「なめてんのか?おまい」と言われそうですがホントウです。「じゃ説明しろよ、このバカタリ」ということになるでしょうから、まず「感度がよくなる」からいくと、風に吹かれるとウキのトップが傾きます。その場合単にただじっと傾くだけではなくて、風の強弱変化と波によって「フンワカ・フンワカ」とある意味リズムをとって振れます。まあ波もでるので振れながら浮き沈みするという感じですね。そのときに「前アタリがあるとウキの振るえが止まります」アタリで沈む以前に振れがフッっと小さくなります。実はこれでアワセをいれると結構針掛かりすることが多いなと個人的には感じています。これが「良くなる」方。で「悪くなる」方は、サカナのアタリ=ラインを下から引っ張る力がウキが傾いているために大抵の場合ウキを真っ直ぐ下に引っ張るのではなく、いったんウキの向きを変える力に変ってしまいます。要するに(要さない?)アタリの下に引っ張る力に横向きの力が加わる合成ベクトルとなるということになります。このウキでは想定していない力のかかり方です。この力は意外に大きいようで実戦ではここでウキを引き込まずに咥えたエサを放してしまうことが割りとよくあるように感じます。釣り手の感想として「感度が悪くなった」という感触を受ける程度の変化量です。

12.遠投性がよくない。まあ普通の棒ウキと同じ程度ではあるのですが、棒ウキの欠点として「無理に遠投すると仕掛けが絡む」というのがありますので、「カラマン棒」つけたり、ウキストッパーの位置をあれこれ変えたりして仕掛けやら投入方法を工夫したりするのですが、その変更の許容量がまたしても少ないために結果として普通の棒ウキより遠くに飛ばすという能力が低下しがちです。したがって、それをカバーするために「別のウキ」を持参する必要があるので、またしてもお荷物になりがちです。

13.仕掛けが絡みやすい。特に足の部分に絡まりやすいです。さらに足が細いためにひとたび絡まった仕掛けが勝手にほどけてくれることも少ない。という特性があります。太くて短くて先細り形状の脚は絡んでも勝手にほどけてくれやすいのです。このウキの「ツイギーのような脚」は(わからん?だろーな・・・・)仕掛絡み問題には最悪の形状なのです。もっともこれも棒ウキ一般の問題ですが。

まあだいたいこんなところです。探せばもっと弱点はでてくるのですが、そのためには殆ど行のような使用回数をこなす必要があると思われます。これだけでも「使用をあきらめる」理由にはそこそこ十分な気がしますのでこのへんでやめておきます。

さて、さんざっぱら弱点を上げつらねてきたので、逆にこのウキならではの「長所」をあげてみます。

実はこれが・・・

「感度がよい」

しかないのです。(個人的には「カッコいい」という極めて主観的なものもありますが・・・)

「サシエが落ちているのがわかる」「メダカが咥えてもウキに変化があらわれる」「微妙な前アタリがわかる」ということです。まさにこのウキの面目躍如たるところです。 が・・・

ただしそれも「極めておだやかな水面で、極めておだやかな潮流で、なるべく良く見えるくらいの距離で、サカナの活性が高くて明確なアタリがでる」という限定条件がつきます。
この限定条件はつまるところ「実験室と同じ」という条件であり、実際には湖沼での釣りくらいでないとあまり実現されることのない条件なのです。ヘラブナ釣みたいなの。

しかもさらにこの条件が満たされるときには「たいていのどんなウキでもちゃんと釣れる」という非常に不幸な?事態が起きてしまうのです。つまり「およびじゃない」わけです。

ああ、なんて悲しい、まさにこれが「イナバウキの悲劇」というわけです。

しかし、さめざめと泣いてばかりもいられません。「屍は乗り越えるためにある」のです。(おいおい勝手に殺すなよって?ごめんなさい)
海洋国家日本の厳しい現実として「早く釣りにいかなければ中国・朝鮮の密漁船にサカナを全部獲られてしまって海にはサカナがいなくなる」という問題も発生しています(「極右だろ?おまい」っていう声もちょくちょく聞かれます)

ということで、次からはもう少し掘り下げて「サカナが釣れるウキ」の観点を踏まえて、この「ウキの流体力学的研究」のこのページについて考察を深めて行きたいと考えて つぶこんてぬ。

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